MOTORBOAT

ルールの遵守について

 海上は様々な目的を持った人によって同じ水域が利用されています。ルールを守らなければ自分自身の安全だけでなく、他人に迷惑をかけることにもなります。
 モーターボートに乗船する際はルールをしっかり守って、安全な航行を心掛けましょう。

海上交通三法

 船舶の交通ルールは3つの法律からなっています。基本的な海上交通ルールを定める海上衝突予防法が制定されているほか、船舶交通がふくそうする東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海については海上交通安全法が、入出港船舶が多い港内については港則法が、それぞれ海上衝突予防法の特別法として制定されています。

    

海上衝突予防法

      

 海上衝突予防法とは、船舶の守るべき航法、表示すべき灯火や形象物、行うべき信号などが定められ、海上における船舶の衝突を予防し、船舶交通の安全を図るために定められた法律です。
 海上での交通ルールの原則は、「右側通行」「操縦性能の優れるものが劣るものを避ける」です。このことを忘れないようにしましょう。
①見張り
 周囲の状況を判断し、他の船舶と衝突しないよう、見渡す=双眼鏡の活用、音を聞く=窓を開ける、レーダーの活用など、そのときの状況に適したあらゆる手段を使って常に適切な見張りをしなければなりません。      
②衝突のおそれ
 他の船舶と「衝突するおそれ」があるかどうかを判断するため、そのときの状況に適したすべての手段を用いなければなりません。他船と衝突するおそれがあるかどうかを確かめられないときは、衝突するおそれがあると判断して早めに行動を取りましょう。

コンパス方位に明確な変化がないときは衝突のおそれがある

コンパス方位が変わるときでも、他船が大型船の場合などは衝突のおそれがある

 

③行会い

 「行会い」とは、真向い、または、ほとんど真向かいに行き会うことをいいます。
2隻の動力船が行会い状態で衝突の恐れがあるときは、互いに他の船舶の左舷側を通過することができるように、それぞれ針路をに転じなければなりません。

④追越し船

 追越し船は、追い越される船舶を確実に追い越し、その船舶から十分に遠ざかるまで、その船舶の進路を避けなければなりません。

⑤横切り船

 2隻の動力船が互いの進路を横切る状態にある場合を「横切り船」といいます。この2隻が衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右舷側に見る動力船は、変針、減速、停止または後進により、他の動力船の進路を避けなければなりません。ただし、他の動力船の船首方向を横切ってはなりません。

港則法

    

 港則法は、港内における船舶交通の安全と港内の整頓を図るために定められている法律です。
 港則法が適用される水域では、海上衝突予防法のルールより優先されますが、港則法に規定されていない事項については海上衝突予防法のルールに従わなければなりません。

①防波堤入口付近の航法

 汽船が港の防波堤の入口または入口付近で他の汽船と出会うおそれのあるときは、入港する汽船は防波堤の外で、出港する汽船の進路を避けなければなりません。「出船優先」と覚えましょう。

②航路の航法

 喫水の深い大型船が出入りできる港または外国船が常時出入りする港(特定港)には航路が定められています。航路における航法は次のとおりです。

  • (ア)航路外から航路内へ入り、または航路内から航路外へ出ようとしている船舶は、航路を航行する他の船舶の進路を避けなくてはなりません。
  • (イ)航路内では並列して航行してはいけません。
  • (ウ)航路内で他の船舶と行き会う場合は右側を航行しなくてはなりません。
  • (エ)航路内では他の船舶を追い越してはいけません。
  • (オ)航路内では、海難を避けようとするとき、人命救助に従事するときなどを除いて、投錨してはいけません。


③港内の航法

(ア)港内における速力・航法    
 港内及び港の境界付近では、船舶は他の船舶に危険を及ぼさない速力で航行しなければなりません。引き波によって付近の停泊船や係留物、港内作業等に悪影響を及ぼさないようにするとともに、いつでもすぐに止まれるように十分減速しておかなければなりません。
 また、港内では運動性能が高く小回りの利く汽艇が汽艇以外を避けなければなりません。    
※汽艇とは、総トン数20トン未満の動力船を指します。これら汽艇は港内においては大型船の貨物船やヨットなどの非動力船の進路を避けなければなりません。
(イ)防波堤等の突端付近における航法
 港内では防波堤、ふとう、その他の工作物の突端または停泊中の船舶を右舷に見て航行するときはできるだけこれに近寄り、左舷に見て航行するときはできるだけこれから遠ざかって航行しなくてはなりません。「右小回り、左大回り」と覚えましょう。

海上交通安全法

 海上交通安全法は、船舶が輻輳する海域における船舶交通について、特別の交通方法を定めるとともに、その危険を防止するための規制を行うことにより、船舶交通の安全を図ることを目的とした法律です。
 海上交通安全法が適用される海域では、海上衝突予防法のルールより優先されますが、海上交通安全法に規定されていない事項については、海上衝突予防法が適用されます。

①適用海域と航路
 海上交通安全法が適用される海域は、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海です。
 ただし、この海域内でも、港則法で規定されている区域や海上交通安全法の目的に沿わない区域は除外されています。

東京湾
(ア)浦賀水道航路
(イ)中ノ瀬航路

伊勢湾
伊良湖水道航路

瀬戸内海
(ア)明石海峡航路  (イ)備讃瀬戸東航路
(ウ)宇高東航路   (エ)宇高西航路
(オ)備讃瀬戸北航路 (カ)備讃瀬戸南航路
(キ)水島航路    (ク)来島海峡航路

②航路航行義務
 長さ50メートル以上の船舶は、海難を避けるため、あるいは人命や他の船舶を救助するためなど、やむを得ない場合を除き、航路を航行しなければなりません。
 プレジャーボートを含む長さ50メートル未満の船舶は航路航行義務はないので、安全上問題がなければ航路の外側を航行して大型船の航行を妨げないようにしましょう。
 なお、航路内を航行するときは、航路に沿って定められた方向に航行しなければなりません。

画像提供:(一財)日本船舶職員養成協会

その他の関係法令

(1)航行区域の遵守

     
  •  小型船舶操縦免許によって航行できる水域と、船舶の構造や性能によって指定される船舶検査証書の航行区域は一致していない場合もあります。船舶検査証書に記載された航行区域の中で自身の資格で航行できる区域を守らなければなりません。
    (関係法令:船舶職員及び小型船舶操縦者法、船舶安全法)

  • (2)ゴミ、廃油を出さない

         
  • ①缶、瓶やペットボトル、ビニール袋や発泡スチロール、ロープの切れ端、絡んだ釣り糸などは海に廃棄してはいけません。
    ②燃料や潤滑油を補給する場合は、海にこぼさないよう十分に注意しましょう。
    (関係法令:海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律)

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    (3)最大搭載人員の遵守

         
  •  船舶検査証書に記載された定員(最大搭載人員)を遵守しましょう。定員は、1歳未満の乳児は算入せず、12歳未満の子供は2名で1名に換算します。
    (関係法令:船舶安全法)

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    (4)遊漁、海面利用のルール

            

     魚釣りなど水産動植物の採捕は、法律や都道府県の漁業調整規則等によって、水産動植物を採捕する際に使用できる漁具漁法、禁止区域、禁止期間、魚種ごとの大きさの制限、夜間の照明利用の禁止や制限など様々な規制が決められています。
    (関係法令:漁業法、水産資源保護法、都道府県漁業調整規則)
    遊漁の部屋

    (5)地方自治体による条例

           

     地方自治体では、それぞれの特定の水域や内水面における水上交通の安全を確保するために、様々な条例を設けています。
    ①水上安全条例
     特定の海域や内水面における水上交通の安全、遊泳者の保護、漁業者の安全確保等を目的として制定される条例
    ②迷惑防止条例
     水上においては、船舶以外のレジャーを楽しむ人の安全を確保するための条例
    ③環境条例
     自然環境や生活環境の保全を目的として制定される条例

    ローカルルール

          

     海岸や川の一区画などの狭い範囲の水域のみに適用するローカルルールがあります。このルールは、地域の関係者等により決められたもので、安全に航行するためには、必ずローカルルールを確認し、ルールに従って航行することが必要です。

    事故を防止するためのポイント

     海上は、海運や漁業、海洋レジャーなど幅広く利用されています。その利用者には、法律等のルールを守り、他の利用者の迷惑にならないような心がけが必要です。