知床岬編
![]() |
|
知床半島周辺海域は,風向きにより半島を境として,オホーツク海側と根室海峡側とでは海上模様が大きく異なっており,オホーツク海側に位置する宇登呂周辺では,通常の風のほかに,知床半島の北方近くを低気圧が通過するとき,前線通過に伴って山脈から吹き降ろす南よりの強い風がある。 この風は局地的なもので,山脈の尾根が比較的低くなっている所の風下側で風力が強く,その強い所はルシャ川河口付近,イワオベツ川河口付近,遠音別付近などである。 特にルシャ川の河口付近は,背後の山脈が硫黄山と知床岳との間で最も低くなっているため,これが風の通り道となって南よりの強風が吹き降ろし,沖合が平穏なときでも河口付近は風浪が強く,時には竜巻状態になることもあるが,この風を地元の人はルシャの「だし風」とか「おろし風」と呼んでいる。 ルシャ川の河口付近は,年間を通してほとんど風の吹いている所であるが,夏の時期は特に風が強く,周辺が凪いでいてもここだけは風浪があり,船舶を運航する者にとって要注意箇所である。 一方根室海峡側に位置する羅臼周辺の風は,宇登呂側と対比するように風向は逆風であるが,地元の人は宇登呂側と同様に「だし風」と呼んでいる山脈から吹き降ろす北西よりの風がある。この風も局地的なもので,その強い所はルサ川河口付近,サシルイ川河口付近,羅臼港,松法漁港などである。 この様に知床岬を境にして,オホーツク海側と根室海峡側とは,正反対と言ってもよい程に風の条件が違い,特に境界に位置する知床岬先端周辺の風の状況は地域特性がより強く,風向により周辺地域の気象とは全く異なることがある。 |