Miniboat

ミニボート航行時の注意

見張りを確実に実施しましょう。

  • 海上では様々な方向から危険が迫ってきますので、航行中は、全周囲に目を配って他の船舶の存在と動きに注意する(見張る)ようにしましょう。特に、他船の接近や、浅瀬等への接近に気をつけましょう。
  • また、釣りの最中は釣ることに夢中になり、見張りが疎かになりますので、十分に注意しましょう。
  • エンジンを切って海上を漂っている間(漂泊中)やアンカーを入れてその場に留まっている間(錨泊中)であっても、他船が気付かず接近してくることがありますので、常に見張りを行うようにしましょう。

船のバランスに注意しましょう。

  • ミニボートは、船体が小さく軽量であるため、揺れやすく不安定な特徴を持ちます。また、重心が高くなるほど、ボートが傾いた際の復原力(水平姿勢に戻ろうとする力)が失われ、船体は簡単に大きく傾き、浸水や転覆する危険性が高まります。乗船者や積載物の配置に注意しましょう。
  • ミニボートの船上で立ち上がると、重心が高くなったボートは揺れやすくなり、バランスがうまくとれなくなって、海中に転落してしまう等の危険があります。安全のため、ミニボートの上では立たないようにしましょう。また、ミニボート内を移動するときは、バランスに注意しながらできるだけ低い姿勢(四つん這い)で動きましょう。

【リジットボートの船上で立ち上がっている状況】
※写真をクリックすると動画が流れます。

【リジッドボートの船上で船外機トラブルの対処をしている状況】
※写真をクリックすると動画が流れます。

【リジットボートの船べりに腰掛けている状況】
※写真をクリックすると動画が流れます。

事故事例 ①

 漂泊して釣り中、乗船者2名のうち1名が立ち上がったことにより、バランスを崩して転覆。クーラーボックスに掴まり救助を待っていたところ救助された。

  • 気象海象の状況:南の風2m、海上平穏

事故事例 ②

 釣り中に燃料補給のため、船外機燃料タンクに給油をしていたところ、風浪による船体動揺の影響でバランスを崩し転覆。

  • 気象海象の状況:東の風5m、波高50cm

事故事例 ③

 推進器の電動モーターのバッテリーを交換するため、左舷の船べりに腰掛けた際、バランスを崩し転覆。ミニボートに掴まっているところを救助された。

  • 気象海象の状況:南東の風2m、海上平穏

事故防止のポイント

 ミニボートは船体が小さく軽量であるため、不安定で揺れやすい特徴があります。乗船者や積載物の配置に注意し、船上では立ち上がらず低い姿勢を保ちましょう。

波・風に注意しましょう。

  • ミニボートは横波や後方からの波を受けると、転覆や船内への浸水の危険性があるので注意しましょう。
  • 風が強いと船内に波が打ち込むだけでなく、船体が風に流されるため思った方向への移動が困難になります。ミニボートが安全に航行できる範囲は、乾舷の高さ(水面から船縁までの高さ)の半分以下である波高20㎝くらいまで、風速では4m/s以下を目安と考えてください。また、海上で風や波が出てきた場合は、早めに帰航するようにしましょう。
  • 乗員が多すぎたり、荷物が重すぎたりすると、船が沈み波がボートに入りやすくなりますので、適切な重量を保つように心がけましょう。釣り用装備品や艤装品は思わぬ重量の増加を招くので注意しましょう。

【インフレータブルボートが横波を受けている状況】
※写真をクリックすると動画が流れます。

【インフレータブルボートが後方から波を受けている状況】
※写真をクリックすると動画が流れます。

波を受けて浸水から転覆等した事故事例

 漂泊して釣り中、波が船内に入り水船状態となったため救助を要請したもの。約1時間後に救助された。

  • 気象海象の状況:西の風9m、波高50cm

事故防止のポイント

 ミニボートは船体が小さく軽量であるため、不安定で揺れやすい特徴があります。乗船者や積載物の配置に注意し、船上では立ち上がらず低い姿勢を保ちましょう。

航行中に波が打ち込んで転覆した事故事例

 航行中に船首が波をすくい上げて浸水し、船首部を残して沈没したもの。乗船者はクーラーボックスに掴まり漂流し、救命胴衣の笛で救助を求め、笛の音に気付いた付近の船舶に救助された。

  • 気象海象の状況:南西の風7m、波高50cm

事故防止のポイント

 波に船首を突っ込んでしまうと、大量の水により浸水してしまう場合があります。正面から波を受けるのではなく、斜め前方から波を受けるように操船しましょう。
 また、緊急事態を周りの船に知らせるときは、笛などを使用すると効果的です。

転覆時の対処法

  • 万が一、転覆した場合は、まず速やかに救助を呼びましょう。仲間のボートや出艇場所の管理者、118番(海上保安庁緊急通報用電話番号)に電話しましょう。
  • 水温の低い水中に長時間いると低体温症になり、最悪の状態では意識がなくなるなど、非常に危険な状態になります。転覆した場合は、転覆した船体の上に乗る、浮いているクーラーボックスに体を乗せるなどして、なるべく海面上に体を出し、体温・体力の温存を図りましょう。
  • 例え、岸が見えたとしても安易に船体から離れて泳ぎ着こうとするのは危険です。海では風や潮の影響が大きく、泳いで前へ進むことが困難な場合があります。船から離れることなく、浮いている船体に掴まり救助を待ちましょう。

【転覆したミニボートの船体に掴まっている状況】

事故事例

 乗船者2名のうち1名が帰航のために船外機のリコイルスターターを引いた際、バランスを崩し転覆。1名はミニボートに掴まっているところを救助され、陸岸へ泳いで向かった1名は漂流しているところを発見されるも死亡が確認された。

  • 気象海象の状況:北東の風8m、波高50cm

事故防止のポイント

 岸が見えたとしても浮いている船体から離れて泳ぎ着こうとするのはやめましょう。潮や風に流されたり、低体温症になる危険があります。

どこまで行けるのか。

  • ミニボートが安全に航行できる目安として、岸から1km以内(沖に出ない)、出航地から2km以内(出発地点から遠くに行かない)で、かつ、自力(オール)で帰ることができる距離を航行するようにしましょう。
  • ミニボート以外の免許や検査を要する小型船舶は、法律に基づき航行区域が定められています。船舶の構造や性能等によって航行区域は異なりますが、最も狭く設定されている航行区域は「陸岸から2海里(約3.7km)以内」とされていることを知っておきましょう。

事故事例

 沖合2kmを航行中にエンジンがかからなくなり、オールで帰航しようとしたものの、思うように前進できず帰航できなくなったことから救助を要請したもの。

  • 気象海象の状況:北西の風3m、波高50cm

事故防止のポイント

 オールをミニボートに積んでいても、実際に使用する機会はなかなかありません。いざというときのために、日頃よりオールでの航行を練習するようにしましょう。
 また、体力がなくなって帰航できない場合は、躊躇せずに救助を求めましょう。

ミニボートは他の船から気付かれにくい!

  • ミニボートはその小ささから、他船から見えにくいため、存在に気付かれにくいものです。大型船、漁船、プレジャーボート等との衝突を防ぐためにも、認識旗等の目立つものを3m以上の高さのポールに掲げるようにしましょう。錨泊中は認識旗とともに黒球を上げておくと自船がアンカーを打っていることを相手に知らせることができます。

事故事例

 錨泊して釣り中に接近する漁船に気付き、大声で叫んだものの、漁船はミニボートの存在に気付かず直進し衝突したもの。ミニボート乗員は衝突時に漁船と接触し、すり傷を負った。

  • 気象海象の状況:北の風2m、海上平穏

事故防止のポイント

 船の大きさにもよりますが、航行している漁船からミニボートは見えづらい存在です。自船の存在を示すために、認識旗や目立つ服装などを用いて、他船にアピールするようにしましょう。

認識旗を装備したミニボート

夜の航海はやめましょう。

  • ミニボートは、夜間(日没から日出までの間)に航行する場合、白色の全周灯一個を点灯するように「海上衝突予防法」で定められています。しかし、夜間は他船から見えづらいほか、目線の低いミニボートからも周囲の状況を確認しづらいために衝突の危険性の高まることや、自船の位置が分からなくなって戻れなくなることがあるので、夜間は航行しないようにしましょう。

【参考:海上衝突予防法(昭和52年法律第62号)(抄)】
(通則)
第二十条 船舶(船舶に引かれている船舶以外の物件を含む。以下この条において同じ。)は、この法律に定める灯火(以下この項及び次項において「法定灯火」という。)を日没から日出までの間表示しなければならず、また、この間は、次の各号のいずれにも該当する灯火を除き、法定灯火以外の灯火を表示してはならない。
一 法定灯火と誤認されることのない灯火であること。
二 法定灯火の視認又はその特性の識別を妨げることとならない灯火であること。
三 見張りを妨げることとならない灯火であること。
2 法定灯火を備えている船舶は、視界制限状態においては、日出から日没までの間にあってもこれを表示しなければならず、また、その他必要と認められる場合は、これを表示することができる。
3 船舶は、昼間においてこの法律に定める形象物を表示しなければならない。
4 この法律に定めるもののほか、灯火及び形象物の技術上の基準並びにこれらを表示すべき位置については、国土交通省令で定める。

(航行中の動力船)
第二十三条 航行中の動力船は、次に定めるところにより、灯火を表示しなければならない。
1~4 (略)
5 航行中の長さ七メートル未満の動力船であって、その最大速力が七ノットを超えないものは、第一項又は前項の規定による灯火の表示に代えて、白色の全周灯一個を表示することができる。この場合において、その動力船は、できる限りげん灯一対を表示しなければならない。
6 航行中の長さ十二メートル未満の動力船は、マスト灯を表示しようとする場合において、そのマスト灯を船舶の中心線上に装置することができないときは、マスト灯と同一の特性を有する灯火一個を船舶の中心線上の位置以外の位置に表示することをもつて足りる。

ミニボートの放置はやめましょう。

  • ミニボートを海岸に放置することはやめましょう。まれに大きな波が押し寄せて、ボートをさらっていくことがあります。また、景観を損ねる原因にもなります。使用後は、自宅や保管場所に持ち帰りましょう。

ベテランの声も聞いてみよう。

  • ミニボートに長年乗っているベテランの方々には、安全に航行するコツのようなものを実践している方もいます。ベテランの方の声も参考にして、安全に航行するようにしましょう。

【ベテランが実践している安全対策の例】

  • 無理な計画は立てない。
  • 出航前点検。特に前回の出航から時間が経っている場合には可動部分が塩等によって固着している場合があるので、出航前に陸上にて可動部分の点検を行なう。
  • リアス式海岸などでは沖合へ出てしまうと、出航場所がわかりにくくなりやすい。出航直後からこまめに振り返り、出航場所付近の目印となる風景を記憶にとどめておく。カメラで撮影しておくのも一手。
  • 出航前に、航行する水域が携帯電話の通話可能エリアであるかをチェックする。出航場所付近では携帯電話が使えていたのに、出航して岬を回りこむような海域では圏外になることが多々あり、いざというときに初めて自分が浮かんでいる場所が圏外であることに気付く・・・そんなことのないよう、海上でもマメに通話可能エリア内であるかどうかのチェックを行う。
  • 携帯電話等の通信手段には予備のバッテリーも携行する。電波条件のいい陸上とは異なり、海上は思いのほか早くバッテリーを消耗するため。
  • 天気予報は出航前だけでなく、出航後も最新の情報を把握するためにも頻繁にアクセスする。
  • 天候、海況が悪化してからでは船速を抑えた航行を余儀なくされるため、常に天候の変化に気を配り、帰航については安全を最優先に考えた早めの決断を行なう。
  • ボートの積載に必要な固定用バンドやロープのスペア品は必ず携行する。また、誤って海へ落としてしまうような主要パーツ(例 ビルジ抜きの栓など)も予備品を携行しておく。
  • 当日の行動予定を第三者に伝えておく。出航届の提出システムのないミニボートでは万一のことが発生したときに発見が遅れるケースがあるので家族や友人に当日の出航地や航行水域、帰航時刻を伝えておく。
  • 海上での燃料切れは、漂流などの事故につながるので、携行缶で予備燃料を持参し、無くなる前に補充する。