水上オートバイ Personal Water Craft
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発航前検査について
各部の役割・名称
水上オートバイには、立って操縦する1人乗りのスタンディングタイプと、シートに座って操縦し複数名が乗艇できるシッティングタイプがあります。
ここでは、シッティングタイプの水上オートバイの一例をあげています。なお、呼称はメーカーにより異なる場合もあるので詳細は取扱説明書を確認してください。
画像提供:(一財)日本海洋レジャー安全・振興協会
名称 | 役割 |
---|---|
① ハル | 水上オートバイ下部のエンジンやジェットポンプを収めた部分。 |
② デッキ | 水上オートバイ上部のフットレストやシートが載っている部分。 |
③ ハンドルバー | 進行方向を変えるためのハンドルで、連動するステアリングノズルの向きを変えます。 |
④ スロットルレバー | エンジンの回転数を調整します。手前に引くと回転数が上がり、緩めると下がります。 |
⑤ シフトレバー | ジェット噴流の方向を反転させるリバースゲートを操作します。機種によってはないのもあります。 |
⑥ 後進システム | 左手で操作するレバーなど、スロットルレバーと別体のレバー操作によって前後進を切り替える機能があります。 |
⑦ ジェットインテーク | 推進力を得るためのジェット噴流に必要な水と、エンジンを冷却するために必要な水を吸入します。入口には格子(インテークグリル)があり、大きなゴミの侵入を防ぎます。 |
エンジン始動前の検査
① 船体の検査
船体は、水上での揚げ降ろしの際や航行中の浮遊物との接触により損傷している場合もあります。
また、吸水口やノズルに異物を吸い込んでいる場合も多いので船体各部に航行の支障になるような損傷がないかどうかを確認するとともに、各部が円滑に作動するかを確認しましょう。
画像提供:(一財)日本海洋レジャー安全・振興協会
検査箇所
番号 | 検査場所 | 具体的な検査事項 |
---|---|---|
① | ハル、デッキの確認 | 外板に傷や損傷がないかを確認。 |
② | ハンドルの確認 | ハンドルにガタがないか、左右いっぱいに動かしたとき、スムーズに動くかを確認。また、ハンドルの動きに合わせてステアリングノズルの方向が変わることを確認。 |
③ | スロットルレバーの確認 | スロットルレバーを数回操作し、スムーズに作動するかを確認。 |
④ | シフトレバーの確認 | リバースゲートのある機種は、シフトとリバースゲートが連動してスムーズに作動するか、またリバースゲートの停止位置は正常かを確認。 |
⑤ | 後進システムの確認 | レバーを数回操作し、スムーズに作動するかを確認。 |
⑥ | ジェットインテークの確認 | 海藻やゴミなどの異物が絡んでいないかを確認。 |
⑦ | ジェットノズルの確認 | ノズル内に海藻やゴミなどの異物が絡んでいないかを確認。 |
⑧ | ドレンプラグの確認 | 確実に締めてあるかを点検。 |
⑨ | シート、ハッチの確認 | 確実にロックされているかを確認。 |
② エンジンの検査
水上オートバイの海難原因で上位を占めるのが運航不能(機関故障)です。
陸上で使用されるエンジンに比べ、厳しい状況で使用されるマリンエンジンの機関故障事故の防止には、発航前の検査が不可欠です。操縦前には次のような検査を必ず行いましょう。
画像提供:(一財)日本海洋レジャー安全・振興協会、日本小型船舶検査機構
検査箇所
番号 | 検査場所 | 具体的な検査事項 |
---|---|---|
① | エンジンルームの確認 | 外板に損傷がないかを確認。 臭気がないか、燃料漏れがないかを確認。 |
② | ビルジの確認 | ビルジがたまっていないか、あれば油分が混じっていないかを確認。 |
③ | 燃料の確認 | タンク内の燃料の残量を確認。 |
④ | 燃料タンクキャップの確認 | 燃料タンクキャップを少し開け、圧力を逃がすとともにキャップのパッキンの状態を確認する。 |
⑤ | 燃料フィルターの確認 | 燃料フィルターにゴミがかたまっていないかを確認。 |
⑥ | エンジンオイルの確認 | エンジンオイルの量、汚れや粘度を確認し、漏れがないかも点検。2ストローク(分離給油方式)はエンジンオイルの残量を確認し必要に応じて補給。 |
⑦ | バッテリーの確認 | バッテリー液が規定量あるか、ターミナルが緩んでいないか、確実に取り付けられているかを確認。 |
⑧ | 緊急エンジン停止コードの確認 | 緊急エンジン停止コードが正しく取り付けてあるか、傷み等がないかを確認。 |
⑨ | 水分離器の確認 | 水分離器内に水がたまっていないかを確認。 |
⑩ | 冷却水の確認 | 間接冷却水の場合、リザーブタンク内に冷却清水が規定量あるかを確認。 |
発航前検査に関連する事故事例
事故事例①
水上オートバイAは、定係地のマリーナ前面海域を航行中、発航前に閉め忘れたドレンプラグから海水が流入。復原力を失い転覆した後、マリーナ所属艇に救助されました。
【事故原因】発航前検査不足(ドレンプラグの閉め忘れ)
事故事例②
水上オートバイBは、友人等が操縦する水上オートバイとともに、遊走海域等で航行していたところ、突然機関が停止し、航行不能となり、友人の水上オートバイに救助されました。
【事故原因】発航前検査不足(バッテリーターミナルの緩み)
事故を防止するためのポイント
水上オートバイで出航する際は、『発航前検査』を確実に行いましょう!
【事故事例①】:ドレンプラグの確認(確実に閉めてあるかを確認!)
【事故事例②】:バッテリーの確認(ターミナルが緩んでいないかを確認!)